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私は幼年時代を化学とは全く無縁のゆたかな自然環境のなかで過ごしてきました。両親が農園をもち、青果市場を営んでいたことからごく自然に自然の産物に関して興味をいだいて育ちました。私は、先祖が自然から学んできたことを教え伝え自然と共存してきたからこそ今の私がここに存在していると考えています。
時代や地形の必要性にによって自然はその姿形を変え、人々の心をゆたかにし、人々が考える環境を造りだし、人が生きるために必要な物と知恵を与えてきました。今日に比べ日常生活の利便性には欠けていたものの、人は、自然という偉大で寛大なゆりかごのなかで保護されて生きてきたのです。
ところが、石油の発見にともない化学製品の発達によって一度に人間の生活環境が激変し、人は変えてはいけない自然を強制的に20世紀の生き方にあった形に変えてきました。科学・化学の発達により、人が多くの恩恵をうけてきたことは、否めない事実です。しかしながら、人の手による必要以上の環境破壊によってこれから失なうもののほうがはるかに大きいということもまぎれもない事実です。
オゾン層の破壊、環境ホルモンによるDNAの変化、現在地球上のあらゆる生物におこっている異常ともいえる変化は、私たちが自然破壊とひきかえに利便性をとったつけがまわってきているのでしょうか。アトピ-、シックハウス症候群、アレルギ-、全てが人工的に造りだされた自然の産物なのです。
私は、植物の研究をきっかけに自然のはかりしれない偉大さの一部をかいまみることができました。太陽の光、雨、風、自然が地球上にもたらすすべてを私達は必要としているのです。私の研究は、単に自然界の研究にとどまらず、自然の母なる大地によって人が守られてきたということを私に教えた研究でもありました。土から生まれ土にもどり、次に生まれてくるもののための糧となる。植物界の原理も形は違えど野生の弱肉強食の原理そのものなのです。
化・科学では、決して解明することのできない自然のおりなす神秘で未知の世界は、言葉では表現出来えるものでなく想像を絶するばかりです。植物の研究から私が学んだことは、人工的に改良を加えたものほどその遺伝子をかえることにより病気にかかりやすく本来あるはずの効果が損なわれてしまっているということです。研究を通して私は、植物においては原種といわれているものがより多くの効能を持ち合わせていることを知りました。何事においても原点にかえれということなのでしょうか。万物の生あるものは、決して改良してはいけないということなのでしょうか。
人は常に自然の恩恵を忘れてはなりません。自然環境破壊よりも自然と共存し、自然の恩恵を素直に感謝して受け入れることを学ばなければ人はこのまま滅亡の一途をたどるしかありません。人間は加工され改良を加えてできた産物ではないのです。それがゆえに人の身体に与えるものは、人を生かせるものでなければならないと思います。開発研究に携わる一人の人間としての責任の重さをつくづく考えさせられました。
宮内 ユタカ
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